ロックブル選手から、大きな声が出ていた。「勝てるぞっ、いけるぞっ！」。 前半戦を終え、14-21とフロンティアーズは７点のビハインド。

カートローズ（ヘッドコーチ）は「セイジ（#58 佐藤聖二 LB）のインターセプト以外は、ひどいディフェンス、スペシャルチームもひどいミスをした。」と厳しく評価。

だが、 ダイノス戦の勝利の後「（フロンティアーズを）誇りに思う」と 選手に伝えたようにチーム選手、そしてコーチ陣への信頼は少しもブレていなかった。

「けれど、グッドニュースがある。そんなミスを繰り返しても、我々はたった７点しか負けていない。」

「７点のビハインドは我々がいいプレイをしていけば、必ず上回っていける。我々は昨年、プレーオフゲームを体験している。 去年も７点のビハインドから勝っている、なんの問題もない。」カートはそう言い切り、選手を奮い立たせた。

また、後半第三クオータ以降の戦いを「今日の試合はタフな試合になる。我々はプレーオフ状態で戦っている。もう何も明日に残す必要はない。力も、なすべき事の全てを、そして情熱も、今日の戦いに出しきろう。」と選手に伝えた。

カートの言葉を信じ、ねばり強く戦った結果はすでに承知のとおり。 決勝タッチダウンは昨秋、xリーグラッシングヤードレコードを更新,常に敵のディフェンスチームのターゲットにされた森本(#20 RB)が奪った。

大阪、長居球技場では「対戦相手のRBをことごとく壊す」と言われた松下電工インパルスディフェンスに壊された。

くどいが、その森本がこの秋には蘇り、この試合の決勝点を決めた。

この春、フロンティアーズはQB故障もあり、変則オフェンスでパールボウルを戦っていた。森本もオフェンスラインで参戦してはいたが、ほとんどブロッカーに徹した。

「最初は嫌でしようがなかった。」とそのころ聞いたが、昨年のリーグ記録更新がオフェンスラインに支えられた結果であることを「自分が走れたのも,みんなの力があったからなんですよね」と実感を込め率直に述べている。

フロンティアーズの勝利は森本がロックブルディフェンスの激しいタックルをかわし、粘り強く４ヤード先のゴールラインを這うように飛び越えたタッチダウンで決まった。 試合後、森本はスカイAが選ぶMVPとしてインタビューを受けた。

「タッチダウンはオフェンスラインがしっかりとブロックしてくれたおかげ、自分のポジション（RB)の仕事をきっちりとやっただけ。」と今春、体験したポジションのチームメイトのありがたさを気持ちを込めメディアに語った。

フロンティアーズを応援するファンには昨年、地区全勝優勝を成し遂げたチームに誇りがある。選手には地区優勝を成し遂げたその数倍の分厚いプライドがある。プレーオフを戦った実績がある、この試合に負けることは少しも考えていなかった。

いよいよ、ファイナル６進出をかけた最後の手続き、日産プリンス東京戦が７日に行われる。選手、コーチ陣、そして関係者には、その両手で、ぜひ夢を奪いとって欲しい。 東京ドームで、その願いが叶う日は近い。

（たかばきんぞう　4th nov '01）