今秋、フロンティアーズ取材に訪ねたスタジアムでは、このページを読んだ選手に囲まれ、袋叩きに会うかもしれない。選手は全日本クラスの精鋭ぞろい、体格が全く違う、鍛え方がスゴイ、勝算は微塵もない、覚悟はしている。

さて、観戦記ページの執筆は我がフロンティアーズ勝利、あるいはナイスゲームを振り返り、反芻（はんすう）し、ファンと共有したいその気持ちの表現である。

東京ドームや川崎球場でのフロンティアーズのナイトゲーム終了後には、家路の電車移動中にコンテンツの構成を組み立てる。自宅に戻り、日付が変わる頃がページ制作の開始時刻。

試合結果、写真集そして観戦記が仕上がるころには空が明るくなる。できあがったコンテンツはネットワークを使用し、自宅から厚木のサーバに送り込む。朝、出社したフロンティアーズファンと「勝利の喜び」とナイスゲームでありながら勝てなかった「悔しさ」を共有する。

最近では、前述観戦記の執筆が徐々に重くなり、試合結果、写真集は継続しつつも、観戦記はついに昨秋、その筆を休めた。スタジアムで試合終了後に感じる昂揚した気持ち「フロンティアーズ・ハイ」がなくなって久しい。その気持ちは必ずしも勝利が条件ではない。

取材を開始した頃、フロンティアーズはまばゆいばかりの光を放つ星だった。1992年から三年連続パールボウル決勝に進出、我々フロンティアーズファンはドームで狂喜乱舞したものである。

この頃、多くの人々が東京ドームに何度も足を運んだ。フロンティアーズのファンそして、そうでない観客をあわせ、その数は万、少なくとも数千人を動員していた。

過去の栄光を追いかけるつもりはなく、数年前とライフスタイルも変化している。まして連休中に観客動員は無理との意見もあろう。リクルート戦では関係者が様々な工夫をしていることも承知している。様々な新しい試みにチャレンジする姿も、確認している。

しかしながら、少なくとも観客動員数はフロンティアーズの現在の評価のひとつである。昨日の試合では両チームの観客数は三千に満たなかった。前述の働きかけの効果はもう少し先にきっと、顕在することだろう。すばらしい企画なので継続して欲しい。

また、二月の納会では、とっても厳しいお話があった。フロンティアーズのみならず、企業スポーツを取り囲む環境も大きく変化。選手諸君には役員の挨拶の一言一句に強く危機感を感じたのではないだろうか

閑話休題

前置きが長くなった、リクルートの試合ではファンの贔屓目、何のデータの裏付けもないが、戦力ではフロンティアーズは全く負けていない...と思う。むしろ多くのファンは優位に立っているとさえ、感じていた。今年、リクルートは主将の仲選手はじめ、12名が引退、1名が移籍。全く新しいチームである。　

リクルート戦は淡々と（少なくともそう見えた）進行、静かに最終の攻防、第四クオータを終えた。試合結果は既に承知の通り、試合後に悔しさとか、無念さはなぜかなかった。

我が愛するフロンティアーズのファンはフロンティアーズに同情的な視線を送るのはもう止めよう。フロンティアーズファンは「なぜ、勝てないのか」と敗因の数をカウントし、議論するのは、止めよう。

フロンティアーズファンが今望むのは、思いっきりプレーする選手の姿。たとえ結果として試合に敗れても、悔しさの余り饒舌な舌が、試合後の挨拶で言葉を失ってもいい。

応援する観客席と一体化、共有できるゲーム展開、ゲーム・プレイからの選手から届くメーッセージを多くのファンは期待している。精いっぱいの、思いっきりのプレーを望んでいる。

選手諸君、試合後50ヤード付近で「春には強くなって皆さんの前に....。」、「秋には、日本一を狙うチームになって皆さんの前に...。」というフロンティアレッツや監督そして主将の言葉がスタジアムに虚しく響くゲームはもう終わりにしよう。

フロンティアーズが強いと感じていないのは選手だけではないだろうか、とも思う。試合前、スタジアムで入手した対戦相手、リクルートのファンクラブ誌KAMOME SPORTSには「春のアメフトシーズン到来！緒戦は強豪富士通」とさえある。

熱狂的なフロンティアーズファンは、今秋のゲームにも、もちろん絶対応援に行くと誓っている。あり得ないことと思うが、総てのファンがスタジアムを離れても、少なくとも応援者が一人いることを選手に伝えたく、久々の観戦記の筆を執る。

選手諸君！素人に言われたくないだろうが、またファンの思いこみと一笑に付されてもいいが、覚悟を決めてあえて言う。

我が愛するフロンティアーズは「なぜ勝たないのか、勝とうとしないのか」 。

この、メーッセージに今秋、答えを出すのは他でもない、フロンティアーズ選手諸君である。

臥薪嘗胆。

（たかばきんぞう 9th oct '00　E01)